トイレのネジ

ジンイチ

スーパー、百貨店、カラオケ、居酒屋、公園、映画館…トイレはどこにでもある。

そんな公共のトイレに、見つからないような小さなカメラを隠し、トイレで用をたしている姿を撮ってその映像を如何わしいDVDにし、販売していると言うのを聞いたことがある。
しかし、そういうのではなく、男性女性とか関係なしに自分の気に入った人間を連れ去る為にカメラをトイレに仕掛けて、監視しているヤツがいる。

そいつは、あまりに気持ち悪い風貌で、見た目にインパクトがある「ジンイチ」という男。
日本中のあちこちで目撃情報があるがどこに住んでいるかは分からない、SNSで有名になったあの男である。

ジンイチは中年の男で、小さい頃からイジメにあい、大人になってもイジメられ仕事も続かなくて、最後には行方不明になった。

当初、生きているのか死んでいるのかも分からなかったが、ジンイチの知り合いが旅行先で見かけた…らしい。
以前の無表情な顔とは違って、ニタニタと笑っていて怖くて声をかけなかったと聞いた。

その辺りから「やたら気持ち悪い人を見た」というSNS上の誰かの呟きから「その人を俺も見た」「私も見た」という情報が集まり、それはジンイチと言う人物だと言う風に噂が流れた。

ジンイチは、気に入った人間を見つけると相手を捕まえて自分の部屋に連れて帰り、その後、捕まえた人の手足を逃げないように鈍器で潰し、口を糸で縫いとめる。
何故、そう言うことが分かったのか。
運良く、そのジンイチから逃げてきた女性がいたのだ。
その女性をユキさんとする。

ユキさんはスーパーで買い物をして、帰りにトイレに入り用をたしてから、ドアを開けた瞬間、男が微笑んで立っていた。
悲鳴をあげる事も出来ず、あっという間に気を失ったらしい。

気がついた時には、男の部屋にいたのだそうだ。
横たわるユキさんの目の前で男は椅子に座っていた。

クサい……鉄のような臭いと不潔な公衆トイレで嗅ぐ臭い。
部屋は糞尿と血の匂いでかなりの悪臭だった。
ユキさんの周りには、裸にされ手足がグチャグチャに潰され、口を太めの糸で雑に縫われている人達が蠢いていた。
そして、部屋の端には死んだ人たちが積み上げられている。