第2話 賢者と魔女

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  「まあ、これは俺の都合であって。あんたが謝ることやないんやけど」  走るのをやめたから寒いのか、家門さんは身をすくめ鼻をすすった。 「寒いなら走ってくださって大丈夫ですよ。もうここ、だいぶ明るいですし」 「あんた、俺に知らん土地で怖い思いした女、夜道に置いていけって言うんか」 「でも……」 「こんなんで風邪なんか引くか。そうならんように毎晩走ってんねや」  そうはいっても、ランニングスウェットの薄さはなんとなくわかる。  バッグの中にフリース素材の小さいスカーフを放り込んであることを思い出した。  真冬はマフラーをするけれど、今くらいの季節にはこれだけで充分だ。 .
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