第2話 賢者と魔女

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  「あの、これ……洗いたてで。まだわたし、使ってないので。よかったら」  差し出した濃紺のスカーフとわたしの顔を、家門さんは交互に見比べる。 「……借りるわ」  意地っ張りではないらしい彼は、顔を傾けた。  巻いてくれってことだろうか。  戸惑いながら彼の襟元にスカーフを巻き、切れ込みにもう片方の端を差し込んで固定した。 「サンキュ」  投げるように言って、家門さんは歩き出す。  慌ててそのあとについていきながら、スカーフを拒否されなかったことにほっとした。 「さっき……」 「はい?」 「さっき、タケちゃんに怯えてたあんたの顔見て、わかった」 「なんでしょうか……」 .
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