第2話 賢者と魔女

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  「あるぇ、おにいさんとおねえさん、知り合い? もしやおれの知らないところでおふたりはにゃんにゃんな関係……?」 「アホ。わけわからんこと言うな。アル中かお前は」 「えへ。ごめぇん」  ひどく罵る言葉が聞こえた気がするけれど、タケちゃんさんは気にも留めずわたしの手を離した。 「さっき、ポリさんがお前のこと探してたで」 「え。おれタイホされるの?」 「いいや。お前マリンちゃんとこに財布忘れたやろ。ポリさん若いからかわいそうに、断れんとおったぞ」 「あっ、ほんとだ! おれの財布、ない!」 「アホ」  わたしのことなど最初からいなかったかのように、タケちゃんさんはふらふらと千鳥足で草むらの斜面に戻っていく。 .
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