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「てか、こんなとこ女がひとりで歩くなや。タケちゃんじゃなかったら事件やったかも知れんぞ」
「すみません」
言いながら、緊張の糸が切れたせいか、頭を傾けた瞬間はらはらと涙が出てきた。
「うわ。なんやねんあんた。やめーや」
「ご、ごめ、ごめん、なさ……」
「はあ……怖かったんやな。よーしよし」
まるで幼児に語りかけるような口調と声で、家門さんはわたしのほうにやってくる。
身長のわりに大きな手が伸びてきて──。
「……!」
なにか言う間もなく、わたしは家門さんの肩に顔を埋めさせられていた。
「泣き止んだら送っていったるわ」
耳元でぶっきらぼうに落とされた関西弁。
なじまないはずのその声が、やたらあたたかく感じてしまった。
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