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「ゆき、ひさしぶり」
「夢の中で会うのって本当にひさしぶりね、たくや」
「自分をこうしてながめているのはいつもとても変な気分になる。それにしても二人ともよく寝ているなあ」
「たくやったら、眠っていないと、こうして夢の中で話すことが出来ないわ」
「それはそうだね。……また手をつないでるよ」
「私、手をつないでねむるの好きなんだもの。」
「ユキ」
「ん」
「最近悩んでそうだね。体も辛そうだ。よくせき込むのをみる」
「うん。なんだかわからないけれど、私、無理をしているみたいなの。やっぱり他人にもわかるのかな。」
「今はボクにもわかるよ。ボクの肉体は今眠っているし、こうして夢を見ているあいだは無意識の世界にいるから、日常生活の時よりも気がつかないことがわかるからね。ユキだってほんとうは、いまボクの状況が見えているでしょう。眠っている今の方が、起きているときよりもわかるんだもの」
「ふふふ」
「ボク、起きているときは、実はまったくユキのことを考えられないんだ。新しい仕事のことばかり気になって、新しい人間関係とか、そっちの方にばかり気持ちがいってしまう。」
「私は…ね」
「ユキ?」
「私は、最近あなたがあまりにも家に帰ってこないから、どうしていいかわからなくなっているの。たくや。あなたときちんと話し合う時間をとって、私との生活をどう考えているのか聞いた方が良いのか、それとも何もアクションをおこさず自然にまかせた方が良いのか、どちらがいいかわからなくなっているの。…だってあまりにも、あまりにもいえにかえってこないから。」
「本当に、なんて言っていいかわからないよ。ボクは今仕事がしたいだけなんだけれど」
「私たち、つきあって何年になるかしらね」
「えーと 12年だよ」
「いろーんなことを二人で乗り越えてきたよね」
「うん。二人とも体が丈夫な方ではないし、年齢も離れているから、たくさん乗り越えることがあったよね。」
「なかなかお互いの両親にみとめてもらえなかった」
「そうだね。あなたが交際をなかなか認めないボクの母親を理解しようとしてくれた」
「たくや、あなたがいつも私をかばってくれた。いつもお母さんの前で私の肩を持ってくれた。素敵だった。」
「ユキは、ボクの体の声を、ボクよりも丁寧に、根気よく聞いてくれたね。ボクは今とても丈夫になった。あなたがいたからだよ」
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