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「…わからない。もう若くないから無理だって言うかも知れない。」
「でも、授かってしまったら産もうと思っている。ユキはそういう人だね」
「そう」
「二人のこれからの人生のために、決断しようね、ユキ。」
「別れる、こと?」
「そうだよ。ボク達がよりかがやくために」
「私たちはお互いに贈り物をしつくしたから、お互いのために私はたくやに最後の贈り物をする…私は別れがとても苦手だから辛そうだけど。でも。たくやがそれで幸せに向かうなら。」
「ボクもあなたに最後の贈り物をするよ。」
「?」
「別れをすっきりした経験として、あなたの中に残すよ。どこであっても自然に話せる関係をあなたに残すよ。別れがとても苦手なあなたに、素敵な別れの記憶を贈りたいんだよ」
「たくやは、もしかして私から逃げたいの?」
「むしろ 一緒にいたいと思っているよ。でも、なぜ一緒にいたいのか、あなたの理由とは少し違う。」
「どんな風にちがうの?」
「ユキと暮らすと生活が楽だから」
「…」
「ユキは、そんなボクをすきになったわけではなかったよね」
「人は変わっていくものなんだな、と思って。」
「でも、自分が愛した人だから最後まで愛したかったんだよね」
「そうなの」
「かっこわるくなってしまったボクに、君がいつも向き合ってきた『一人ぼっちで生きていくことの厳しさ』を感じるための試練を与えてくれるかい?」
「ええ」
「そしてユキは、もうがまんしなくていいんだよ」
「たくや」
「そうね、私もたまには子どもみたいに甘えたい」
「そうだよ。そうやって少しずつ、肩の力を抜いていくんだ」
「ありがとう」
「そろそろ 朝ね」
「夢が覚めていくね」
「話せてよかったわ。ありがとうたくや。」
「みてごらんよ。まだ二人手をつないで眠っているよ」
「別れの朝が来るまで、あとどのぐらいこうして手をつないで眠れる日がすごせるのだろうな」
「あなたの望みは?ユキ」
「え」
「教えて」
「別れる朝まで、かな」
「ユキ、知ってる?ボク達が望んだことは、すべて叶うんだよ」
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