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「ちょっとネットから知恵を借りるだけで、オムライスの手間ってこれだけ省けるんですよ。少し味は落ちるかも知れない。もしかしたら完璧ではないかも知れない。でも、私はそれだっていいと思うんです」
ひかりは食器を拭きながら笑顔で言う。奈々美はそんなひかりに対して自嘲気味に答えた。
「でも、周りはどう見るか……まあ、娘の食事ひとつ作れていない私が周りの目とか、それはそれで笑っちゃいますけどね」
ひかりは水道の水を止め、手を止めて奈々美の方を向いた。
「周り全員から認められることなんて、できませんよ。そんなこと。大事なのは、バランス良くベストを尽くすこと。でもそれを1人で抱える必要はないと思うんです。手を抜くところは手を抜いて、協力を頼むところは頼む。これでいいのではないでしょうか?勿論、『りえぞん。』のこともどんどん使って欲しいです。自分を追い込みすぎる必要なんてないんですよ」
ひかりの優しい視線を見て、奈々美の涙腺が少しだけ緩んだ。
すべてを抱え込み、すべてを完璧にこなそうとガチガチに身構えている自分を変えたい。奈々美は心の底からそう思った。
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