プロローグ

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「橋本さん、どうしたの?」 3時間目の図画工作の時間が始まって35分。2年3組担任の小宮早織は白紙の画用紙の前で涙を流し続ける橋本歩美に声をかけた。 歩美は早織の問いかけには答えず、ただただ涙を流し続ける。 周りの児童たちはすき焼き、カラフルなお弁当、大きなケーキと骨つきのチキンなど思い思いの絵を描いていたが、何人かが異変に気付き筆を止め、歩美の方を向いた。 歩美は一言も発さない。ただただ歩美の右目の目尻から頬へ流れる雫が早織に何かを訴えかけていた。 早織は歩美の涙の理由を探ろうと、2年3組の担任になってから今までの出来事を思い出していた。 春の遠足 運動会 そして今日この時間、児童に課した絵のタイトル 早織はハッとした。もしかしたら私は大きな過ちを犯したのかも知れない。歩美への罪悪感が早織の胸を締めつける。だが早織には打開策が見つからない。 結局早織が何もできぬまま授業終了のチャイムが鳴った。
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