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「では子育てではどうでしょう?」
川口がそう言ったところで、再び奈々美が噛み付いた。
「ちょっと待って。それじゃあ私が離婚したのが全て悪いって言うの?1人になったんだから不利を受けるのが当たり前だって言いたいの?父親がいないんだから苦しむのなんて当たり前だ、文句言うな、って言いたいの?」
「別に離婚が悪いなんて言ってませんよ」
鬼の形相の奈々美に川口は冷静に言う。
「むしろ、橋本さんは人一倍頑張ってらっしゃる。歩美さんを育てるために、文字通り身を粉にして働いていらっしゃる。でも、やっぱり1人だと限界があるんです。父親と母親の一人二役は普通の人には無理だ。だから、頼れるところは頼りましょう。こんな鬼畜なハンデ戦からは早く降りた方がいい。これは歩美さんのためだけではありません。このままだと、2人とも潰れてしまう」
「私の能力がもっと高ければこんなこと言われないのに……」
「能力が高くても低くても、人間にはできる限界がある。そしてそれは人それぞれだ。その限界があること自体は恥ではありません。恥ずかしいのは、限界なのに手を一切打たないで、そのまま破綻することだと思いますよ」
川口はまっすぐ奈々美の目を見て言った。
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