2、ハンデ戦

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沈黙が流れる中、早織が一枚のチラシを差し出した。 「これは?」 奈々美はチラシを見て早織に尋ねた。 「 こども食堂です。聞いたことありませんか?」 こども食堂とは、家庭の貧困により満足な食事が得られない子どもや、1人ぼっちでの食事が日常化する、いわゆる「孤食」の問題を抱えた子供たちに無料もしくは低価格で温かく、暖かい食事を提供する社会活動だ。チラシに記載されている「こども食堂 りえぞん。」では、週に2回、水曜日の夕食と日曜日の昼食を提供している。こどもの参加は無料。大人の参加費は150円だ。 奈々美はなかなか首を縦に振らない。 「川口先生の言うように、頼れるところは頼ってみましょう。橋本さん」 早織の熱のある一言を受けて、奈々美はようやく重い口を開いた。 「娘に聞いてみます。行ってみるかやめておくか。決まったらまた連絡させてください。私としては……悔しいですが、行かせてみたいと思います」 奈々美の顔が敗北感に満ちているのに対し、小宮と川口は安堵の表情を浮かべた。 「では連絡をお待ちしています。今日はありがとうございました」 早織がそう言うと、奈々美は一礼をして教室を出た。早織が時計を見ると午後4時47分を指していた。時間はすでに規定の30分を大きく過ぎていた。
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