パラサイト

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パラサイト

 汗と、血と、火薬。そして地べたに這いつくばり二度と動かなくなった、人だったもの。それが、目の前に広がる光景の全てだった。薄汚れた視界には指先ほどの銃弾が飛び交い、地が朱殷に染まっていた。見上げてみれば、黒くくすんだ摩天楼が、赤黒く淀んだ暗雲を背に乱立している。  しかし、その遺跡の建物は全て原形をとどめてはいない。見上げるほどの高さのある苔むしたビルが中央でぽっきり折れ、地面に突き刺さっていた。 「人も、かなりの技術を持っていたんだな……」  そんな風景を見ながら、俺はその高度な技術に思いを馳せる。しかし、ここは血生臭い戦場。崩れ落ちかけたコンクリートの太い柱に背を預け、銃を胸の前に構える。たたたた……と、小気味よい銃声が響く。銃も遺物の一つだ。  俺は戦闘準備に入った。数瞬目を閉じて、目を開く。すると、無駄な情報が排除された、モノクロの視界が広がった。そして隣にいる名も知らぬ兵士に声をかける。 「俺が突っ込む。援護してくれ」  そう呟いて、その兵士に視線を送る、彼は、目を見開いて、ぷるぷると首を横に震わせるだけだった。     
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