石板

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 この帝国は、二百年以上安定して続いている。その前は国などはなく、ぽつぽつと小さな集落が点在し、慎ましやかな生活を送っていた。その人々を統括し、ここまで大きな国にしたのは、ひとえに現皇帝の先々代の功績だろう。しっかりと税金をとり、平等に分配することで、国民は飢えも貧困もない生活を享受している。  このような歴史のため、今までこの地に遺跡など、ほとんど発見されてこなかった。しかし、先日、古代の遺跡が発掘されたのだ。私もその発掘に関わりたかったのだが、まさか皇帝陛下直々の命を受けて関わることになるとは予想もしていなかった。  改めてその石板を見つめてみる。薄汚れた石基に細かく文字のような文様が刻まれている。一つ一つの文字は、直線であったり、芸術的な曲線であったりと、多種多様だった。  これでも私はプロだ。この程度の古代文字を解読するなど造作でもない。私は書棚の資料をいくつか引っ張り出し、文法の規則性や文章の意味を見いだしていった。 ……幾日か経過し、この石板の言語の法則もある程度分かってきた。そして、この石板に刻まれている文章の内容も分かってきた。なにやら、物語のようなものが綴られていた。  恐らく予言なのだろう。予言の類いは、石板に書かれる内容として至極一般的なものだ。しかし、殆どの予言は眉唾だったり、空想だったりと、当てにならない。  私は少し落胆しながら、目の前の文章をさらに読み進めていった。しかし、読み進めていくうちに、違和感を覚える。何か、何かが、今までの予言書とは違う。     
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