石板

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 きっと全ての人間は私を非難するだろう。しかし、それでも構わない。もし誰も気づいていなかったとしても、この国を救った名誉は、私の命を捧げるに値する以上の価値があるのだから。   牢の鍵が解かれ、扉が開けられる。それとともに、私に多数の視線が突き刺さる。しかし私は目を閉じる。心を閉ざす。この国が滅びる運命があったことを知っているのは私だけでいい。私の役目は、私の全ては、これで成し遂げたのだ。  私は徐に立ち上がった。これが、私の最後の自発的な行動となった。 *****  あるところに、一人の男がいた。その男は慎ましやかな衣服を身につけ、地面にしゃがみ込んでいた。 「うぅん。つまらないな……」  その男は、石板にたがねと金槌を器用に操り、文字を刻みながら呟いた。 「この地の未来なのにこんなに地味では、王が退屈してしまう……。この地で発展する国は何でこんなにも安定しているんだ……」  男は頭をひねった。そして、一つの考えを思いつく。  「そうだ! どうせこんな石板なんか王が一度読んで終わりなんだから、この未来の国は私が考えて、面白い内容にして書けばいいんだ!」  男は俄然やる気が出てきたようだった。そして、その男によって書かれた石板は未来に託される。
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