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私達の住む星は小さい。どのくらい小さいかというと、星の裏側に座っている彼の後頭部が、立ち上がれば見えるくらい小さい。この星に住む生物は私達ただ二人だけである。この星の生物が生殖すると、必ず男女の双子を生む。その男女の間に再び男女が生まれる。この星に生物が誕生したときからずっと、そのようにして子孫を存続させてきたという。つまり、私と彼はきょうだいであり、将来的には、種の存続のためのパートナーとなる。
私達に名前はない。人を呼ぶ言葉は「私」または「僕」と、「君」しか必要ないからだ。両親は私達に名前を付ける前に死んだ。もっとも、今生きていても、やはり私達に名前はなかっただろう。母も、父も、男児も、女児も、それぞれ一人ずつしかいないのだから。
私達は大気を食べ、大気を吐いて生きる。だから大気はなくならない。同じ大気を吸って生きるのだ。私達以外に生物がいないので、他の生物に襲われる心配もない。
この星では一、二時間ごとに朝と夜が巡る。そのため、決まった時刻に眠るという習慣が私達にはない。眠りたいときに眠り、起きたいときに起きる。朝起きて活動し、夜に眠るという生活をしていたら、あまりに忙しすぎて疲れ切ってしまうだろう。
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