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「そうよ~。頑張って作ったのよん♪お粥ちゃんの似顔絵つきよっ」
ケーキの中央には、写真かと思うくらい、ガチなお粥の顔が描かれていた。
「しかもこれ、陣内ちゃんの手描きのやつだから」
エレナちゃんの補足説明に、驚愕した。
「えっ!!マジですかっ」
陣内さんがいる方向へ振り返ると、陣内さんがまあねと、少し照れたように鼻を擦っている姿が朧気に見えた。
陣内さん……やっぱりなんだかんだで、天才カリスマ漫画家さんなんだなぁ。
ぽんぽこで飲んだくれて、担当編集者の飯野さんから逃げまくってる設定だけど。
そう言えば、今日もここで飲んでて大丈夫なんだろうか。
「それじゃ、ロウソクがケーキに零れないうちに、バースデーソング歌うわよ♪」
菜摘ママが号令をかけると、ぽんぽこの皆や、席に座っていた常連っぽい感じのお客さん達が一斉に歌い始めた。
「ハッピーバースデートゥーユー♪ハッピーバースデートゥーユー♪ハッピーバースデーディアお粥ちゃ~ん♪ハッピーバースデートゥーユー♪♪♪」
ダミ声率が結構高い歌声に、思わず苦笑してしまう。
架空の(架空なんだかリアなんだかイマイチ分からない状態だけど)オネェスナックで、まさか自分のバースデーソングを歌ってもらって誕生日を祝ってもらう日がやって来るなんて。
スゴく貴重なことで、めちゃくちゃ嬉しいっ。
「ありがとうございます!!」
私はそう言ってから、勢いよくロウソクの火を消した。
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