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辺りは、暗くて不気味で陰気さが漂っていた。一応、消えかけの点滅している外灯とかチラホラあるから、真っ暗闇って程暗くはないけど。
そもそも、夜に路地裏を1人で通ることはなかったので、見たことのないその異様な景色を目の当たりにした私の腕からは、自然に鳥肌が立った。
その時だった。
「キキキッ」
「キャーー!!」
私の目の前を、信じられないくらいの大きさのドブネズミが駆け去っていった。
ヤバい、怖いっ。早く引き返さなくちゃ……。
そう思いながら慌てて後ろを振り返って、私は驚愕した。
「道が……ない」
確かに、白猫ちゃんを追いかけて後方から此処まで普通に小走りでやって来た筈。
それなのに、驚くべきことに私の後ろは、猫が1匹入れるくらいのスペースの抜け穴のようなものしか無かった。
周りは壁のようなもので塞がれていて、人間が通れる道なんて存在しない。
「ちょっ……何これ!?」
私が通れる道といえば、どう見回してみても、もはや前に続いている薄気味悪い一本道しかなかった。
もしかして、あの白猫ちゃんにハメられた?
「ええぇ……嘘やろ……」
まさか、さっきまで電車の中で読んでた作品みたいな展開に、リアの自分が陥るなんてっ。
最悪だ……よりにも寄って、誕生日の前日に。
お粥行方不明になる、って?
いやいや、そんな訳にはいかないしっ。
何が悲しくて誕生日の前日に行方不明にならなきゃならないんだか。
さっきみたいなドブネズミがいる気味の悪い道で、いつまでも立ち止まっている訳にはいかないし。
きっと歩いてたら、そのうち家の近所のどこかに繋がってる筈。
……見渡す限り、建物とか明らかにうちの近所にありそうな感じのものっぽくないけど。だから不安なんだけどっ。
どう考えてもパラレルワールドに迷いこんでしまったっぽい私は、仕方がないので、とりあえず前へと進むことにした。
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