1人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
*
そうして歩くこと5分。
5分歩いていることに気づいた時点で、もう既に此処はガチでパラレルワールドなんだなと確信した。
だって、5分も歩いてるのに表通りに出られないわ、いつまでたっても歩いてる場所の雰囲気が一向に変わらないって、フツーあり得ないでしょ。
もーお粥の頭の中で、怪談話を語らせたら日本一なあの髭のおじさんが、さっきからずっと怖いよー怖いよーって言ってるし。
心臓が常に前のめりに飛び出しているような感覚のまま、それでもなんとか震える足を動かすうちに、やがてある古びたビルが視界に飛び込んできた。
「え……ここ、終点?」
道は、前方の古びたビルの前で終わっていた。
つまり、その先は道も何もないという訳だ。
「嘘ぉ……これ、帰れない系ホラーのやつやん」
私はガックリと項垂れた。
それもこれも、白猫を触りたいと思ってしまったが為に、だ。
どうして、白猫にあそこまで執着してしまったんだろうか。
どう考えても、何かにとり憑かれていたとしか思えない……。
目の前の古びたビルの近くまでとりあえず歩いていくと、これまた物凄く古ぼけたエレベーターがあった。
エレベーターの横には、階ごとに入っているバーやスナックの店の名前が縦に記されていた。
「テナントビルか……」
下の階から順番に名前を見ていた私は、ある階の店の名前を目にした途端、思わず凝視した。
「……え?ぽ、ぽんぽこ御殿っ!?」
金色のプレート上に、7色の文字で浮かび上がっていた文字は、間違いなくぽんぽこ御殿だった。斜め上にはオネェの桃源郷と書かれてある。
「ぽんぽこ御殿って、あのぽんぽこ御殿?」
ぽんぽこ御殿は、私がいつも読んでいるエブ作品のぽんぽこアワーという話の中に出てくるオネェスナックだ。
仲良くしてるクリエのルイスさんが書いてる作品世界の中のオネェスナック。
……だとばかり思っていたのに。
「実在、するんだ……」
ただでさえ、今リアにおける非日常真っ只中だけど。
まさかそれに加えて、エブで読んでる作品の中で描かれているオネェスナックに行き着くなんてっ。
私、夢でも見てるのかな……。
最初のコメントを投稿しよう!