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「ど、どうもこんばんは」
「いらっしゃあぁい。道、迷わなかった?」
カウンターにいる菜摘ママの前まで恐る恐る近づいていって、私はあることを確認するべく、菜摘ママの顔をまじまじと見つめた。
ヤバいっ!!吹くっ。
菜摘ママの左のつけ睫毛は、やはりとれかかっていた。
私、ほんとのほんとの本当に、ルイスさんの小説の世界に来ちゃったのかな。っていうか、リアにこの店が実は存在してたの?
リアにしろ誰かが書いた空想にしろ、どちらにしても此処はパラレルワールド感満載だ。
菜摘ママに促されて、私はカウンターの真ん中に座らせてもらうことにした。
さっきまで天井に目を奪われていて、次に目に飛び込んできたのが菜摘ママで。
心臓に悪いなぁ、もう。魂抜き取られてやしないかな。
そう言えば、ルイスさんの小説通りなら、菜摘ママってフツーの人間じゃない設定だったよな、確か。
目が店内の空間にすっかり慣れた状態で、改めて辺りを見渡す。
……あ!!
カウンターの奥に陣内さんもいる!!
うわぁ~。本当に一昔前ならモテてたような感じの残念なイケメンだ。ちびりちびり、あのお酒ってバーボンなのかな?飲んでるしっ。
あぁっ!!
ボックス席には、恭子ちゃんにエレナちゃん、それにヴィヴィアンナちゃんもいるっ。
恭子ちゃんの筋肉ムキムキな着物姿、リアで見たらこんな感じなんだ~。成程、こりゃ確かにはちきれそうだわ。
あの着物、あつらえるだけでもめっさ布地の量いりそうだな。高そうだし。
でも、なんでか奇跡的っていうか、恭子ちゃん……似合ってるなぁ、着物姿。
エレナちゃんとヴィヴィちゃんは、私が描いた通りのヴィジュアルだ!!
なんかスゴく嬉しいっ。
2人とも、やっぱ綺麗だなー。
「こらこらぁ、そこでトリップしてるショートガールでロングヘアーガール。こっちに戻ってきなさ~い」
菜摘ママが、そう言いながらおしぼりを差し出してくれた。
「あ、ありがとう、菜摘さ……」
そう言っておしぼりを受け取ろうとした瞬間。
「だあぁっ、あっつーー!!」
おしぼりは、ものすごく熱かった。
私はオリンピックで賞に入ったのが分かった瞬間、バトンを空中に放り上げた、かの有名な陸上選手のようにおしぼりを放り上げた。
くっ……やっぱり此処はぽんぽこ御殿だ。
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