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「あら、熱かった?メンゴメンゴフラメンコ~♪」
そう言うと、菜摘ママはカウンター内で突如本格的で情熱的なフラメンコを踊り始めた。
音楽も、途端にフラメンコ調な音楽に切り替わってる。え、何で?タイミング良すぎじゃね!?
腹が立つどころか、菜摘ママが踊るそのフラメンコのクオリティーの高さに、私は心底驚いた。
ひとしきり菜摘ママの完成度の高いフラメンコを観てから、ハッと我にかえった。
何度も言うけど、やっぱり此処はぽんぽこ御殿だ。
男は来い来い、女は帰れっ。
男が来ると歓喜の嗄れ声が沸き起こり、女が来ると能面ヅラで舌打ちをする。
ルイスさんがぽんぽこアワーで書いていたフレーズが、ふいに頭を過った。
これは、ぽんぽこ御殿流の女子に対する挨拶というか最初に受ける洗礼なんだろう、きっと。
……ってか、ルイスさん。そこんところもちゃんと書いといてよ~。
おしぼりは、1分もすれば丁度良い感じの温さになった。
「お粥ちゃ~ん。飲み物は?」
「あ……えーと……」
迷っていると、いつの間にかカウンター内に入っていた恭子ちゃんがスッと飲み物の入ったグラスを差し出してくれた。
「え……恭子ちゃん。これ、もしかして……」
超絶酸っぱい、例のアレなんじゃ。
「い、頂きまあぁす……す、酸っぱっ!!」
飲み物は期待を裏切ることなく、安定の超絶酸っぱすぎるレモンサワーだった。
う、う~む。 ぽんぽこ御殿の世界観を堪能していると思えばそうなのかもしれないけど。
堪能というよりは、罰ゲームをくらっているような感覚が……。
私はそこであることに気がついた。
「あれ?そう言えば、ママ……何で私の名前を知ってるの?」
私の質問に、菜摘ママがつけ睫毛がとれかかっている左目をウィンクさせながら答えてくれた。
「そりゃ知ってるわよぉ。ルイスが書いてるこの世界の住人なら、誰もがね」
菜摘ママがそう言うのと同時に、いつの間にか私の両隣りに来ていたエレナちゃんとヴィヴィちゃんが、可愛い声で話しかけてきた。
「そうそう。この間は、私達のイラスト描いてくれたでしょう?エレナ、めちゃくちゃ嬉しかったわ。那智より上手って言ったら、那智のやつひねくれて、3日間口きいてくれなかったけど」
「ほんとほんと。お粥ちゃん、丁寧に描いてくれて本当にありがとね♪」
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