番外編 黒猫と寒い夜編(前編)

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 使用人に預けることもできるのだが、彼らの本来の職務を邪魔することを嫌って、真面目なプリシラは子猫の世話は、彼女の責任でしようと決めていた。  次の日も、その次の日も結局ベッドに入り込んで、二人を困らせたのだった。  §  子猫はプリシラの膝の上をすっかり気に入ってしまい、彼女がソファに座ると必ず寄ってきて、ここが自分の席だと主張する。 「猫はほとんど寝ているものなのね……」  プリシラは飼い方に関する本を読みながら、膝の上でくつろぐ子猫を撫でていた。  ルイスは王都の住民向けの掲示などを利用して、飼い主を探しているようだが、いまだに見つかっていない。  このまま飼い主が見つからず、伯爵家で引き取ることになってもかまわないとプリシラは思っていた。けれど一方で、それがよいことではないともわかっていた。 「プリシラ、少しいいですか?」  仕事へ行ったはずのルイスが現れる。職務に熱心な彼がさぼるはずもなく、なにか急用で帰ってきたのだろう。 「どうされたのですか? お出迎えもせずにごめんなさい」 「いいえ、急でしたから。……それよりも、猫の飼い主がわかりました」  言葉を聞いた瞬間、プリシラの胸はぎゅっと締めつけられた。 「そうですか! よかったです。どなたか貴族のお屋敷で飼われている子だったのでしょうか?」     
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