代わりにはなりたくない

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仕方なく階段で下りようと外の非常階段へと続くドアを開けると夜風が疲れた体を冷やす。 階段を数段下りたとき、下の階のドアが開いた。他にも残業で残っていた社員がいたのだ。ドアから出てきたのは佐伯先輩だった。 「あ……長谷川くんも今帰り?」 「はい……」 先輩は疲れた顔だ。俺を見て緊張しているのか、ドアのそばから離れなかった。 「金曜の夜なのに金城さんとデートじゃないんですね」 思わずまた嫌なことを言ってしまった。疲れた先輩の顔がさらに泣きそうな顔に変わる。 「あのね、長谷川くん……」 「そっか、金城さんはご家族のところですよね」 「長谷川くん……」 「じゃあ今日も先輩の家に行ってもいいですか?」 「やめよう……」 「はい?」 「もうやめよう……私たち」 俺は先輩の言葉が理解できずにいた。 何をやめるというのだろう。無意味な性欲処理をだろうか。 「そもそも始まってましたっけ?」 俺は冷たく言い放った。 「こんなこともうだめだよ……」 「こんなことって、先輩が俺を金城さんの代わりにすることをですか?」 嫌みを込めた言葉に先輩は目を潤ませ頷いた。俺は怒りが湧き上がる。 「やめようだなんて、先輩がそれを言います?」 「………」 「金城さんの代わりに俺を利用して、満足したら捨てるの?」 先輩の目からは今にも涙が溢れそうだった。
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