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次の日。
「あーっ、もう。時間ギリギリすぎだよ。」
「仕方ない。月島さん。後ろに。」
「ちょっと。毎回私が寝坊しているみたいだけど。今回はちがうからね。」
今日はあやめが寝坊した。何でも私の話を聞いて安心したらしく、また一緒に帰れなかった憂さ晴らしのため、かなり遅くまで裕と電話していたみたいだ。
裕はかなり眠そうだ。起きてくるところが凄い。
「今日はあやめが遅刻の原因だから私を後ろに乗せてよ。」
「えっ、茜ちゃん。いや…。」嫌とは言えない。原因が自分だからだ。
「お前を乗せても速くならんぞ。」
「いいじゃん。今日は遅刻で。」
理由があやめだけにそれ以上は言わない裕。
あやめ、あんたはこれだけ裕に大切にされてるんだよ。私なんかに嫉妬しちゃだめ。
「今日だけだから。」あやめに頼み込んで譲ってもらった。
裕の背中にしがみつく。大きくて頼りがいのある背中。あやめしか触らせたことがないであろう彼の背中に顔を埋める。
女性恐怖症で、裕に触れるのは家族とあやめと私だけだ。
ヤバい。泣く。
「茜ちゃん。裕ちゃん運転してるからわからないよ。」
あやめが囁いてくれた。
うん、今日だけ…。いや、この朝だけはあやめ。私に裕を譲ってね。
これを期にあやめに嫉妬するのはやめた。
今は太一君の彼女が敵だ。
私の友人であるあの女をどう蹴落とすか。
私は再び、新たな嫉妬を身にまとうのであった
完
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