377人が本棚に入れています
本棚に追加
/630ページ
「とにかく夢にまで見た私達の赤ちゃんが産まれるまではあなた、なんとしてでも頑張って下さい」
と、夫を勇気づけようとして言った言葉に明子はしまった!と後悔したが遅かった。
「赤ちゃんが産まれるまで?……そうか僕は……」
最も早ければあと二ヶ月で赤ちゃんは誕生する予定だ。
言わずもながである。
倉石忠雄の余命はあと二ヶ月あるかないかと明子は示唆していると同じことなのだ。
「僕はあとたったの二ヶ月しか……」
忠雄は茫然と宙を見つめた。
「違うのよ、そんなこと言ってないでしょう?」
明子は自分のミスを訂正しようとしたが、その顔はこわばっている。
最初のコメントを投稿しよう!