第二部

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「それもありますが、あなたは今の会社に居ればゆくゆくは重役にも推挙されるのでしょう?お給料も良いし……私は今のこの裕福な生活を棄てるのは絶対に嫌です」 倉石は組んでいた長い足をほどく。 「雄一のことよりお金には不自由しない現在の暮しのほうが大事なんだな?」 倉石は思わず軽蔑の瞳に変わる。 「金より大切なものは何だ?」 倉石は眉間に深い縦皺を作る。 妻を信頼していたからこそがっかりしたのだ。 「あなた、よく考えて下さい。あなたの年齢では再就職なんてそう簡単には出来ないと思うの。いくら大卒といっても同じぐらいお給料を貰える仕事なんて見つからないと思います」 明子の実家は資産家。 幼い頃から何不自由しない生活を送って来た。 苦労知らずなのは倉石も同じなのだが。 よく言うではないか。 恵まれた暮しをしていた者はどん底に落ちたらそれに耐えられないと。 豪邸に住み、高級外車を乗り回していた者が破産とかして安アパート暮しが出来るか?
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