俺は君のママじゃない

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 それは、まさしく、卵の中から聞こえてきた。  孵化しようとしている?  溂は、魔法をかけられたようにその場を動かなかった。  卵を見つめ続けた。  ぴりぴり。  七色に輝く卵の頂上辺りに、薄いひび割れが生じた。  はじめはごく薄かったそれが、みるみる色濃く、大きくなっていく。  音が明瞭になる。卵の殻に、割れ目が生じた。 「あ……」  ぺろんとひとかけ、内側に陥没して……、  ……卵のてっぺんから、白っぽいものが覗いた。  白くて、ふわふわしていて、柔らかそうな?  ……ふわふわ? もふもふ?  だがちらっと覗いたそれは、すぐ引っ込んでしまった。  外の冷たい空気に驚いた、とでもいうように。  見間違いかと思った。  だが、溂の視力は、両目1.5、見間違いなどではなかった。  再び、白いもふもふが出てきた。  ちょろりと覗いてすぐに引っ込み、また覗く。こっちにちらり、あっちでもぞもぞ。  もふもふは、2つ、あるらしい。  次第に、見える面積が広くなってきた。  というか、これ、……、  ……羽?  二枚の羽の間から、そろそろと頭が持ち上がってくる。  プラチナグレーの、柔らかそうな髪が、風になびいた。  続いておでこ。  肌の色は、真っ白である。     
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