206人が本棚に入れています
本棚に追加
/229ページ
「おい、ナナ、」
声をかけると、下着のゴムが、ぐいっと引かれる。
七緒が、足のかぎ爪をゴムの間に突っ込み、引っ張っていた。
「何やってんだ、ナナ?」
ぱつん。
ゴムが腰を打った。
「痛っ」
思わず眉を顰めると、耳元で、コウ、と聞こえた。
七緒にしては、小さな声だ。
まるで、ささやくような鳴き声。
白い顔が、すぐ近くにあった。
「近い近い近い。離れろよ」
というか、息苦しい。
七緒の羽が、溂の全身を覆っていた。
白くて柔らかな2枚の翼が、ふんわりと、溂の体を包み込んでいる。
「コウコウコウ」
何かを訴えるように、七緒が鳴く。
もちろん、溂には、何を言っているのかわからない。
「おい、ナナ、」
言いかけて気が付いた。
顔が近いだけじゃない。
七緒の体が、溂の体に密着していた。
いつものように、七緒は服を着ておらず、そして……。
「げ」
いつの間に脱げたのやら、溂自身のパジャマも、どこかへ消え去っていた。上も、下も。
溂は、パンツ一丁で、寝ていた。
七緒の羽の下に。
羽を通して白くなった朝の光が、七緒の顔を照らす。
普段から白い、七緒の顔が、発光したように真っ白だ。
最初のコメントを投稿しよう!