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何かが動いた。
ジャムの棚の辺りだ。
思った通りだ。
「なな」
溂が言うと、七緒が、ひょいと顔を出した。
白い顔の、口の辺りが、真っ赤に染まっている。
足元には、割れたいちごジャムの瓶が落ちていた。
「グワッ?」
溂の顔を見ると、七緒は、とぼけた声で鳴いた。
申し訳なさそうに、見えなくもない。
途端に、溂は、馬鹿らしくなった。
なにが、番い認定だ。
だってこいつは、まだ、こんなに子どもで……。
七緒の行為に、少しでも、困惑を感じた自分が、バカみたいだ。困惑と……ときめきと、愛の手管について考え込んじゃったりして?
何やってたんだ、俺。
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