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俺は君のママじゃない
森を歩いていて、見つけた。
すべすべしていて、楕円形。上が少し細くて、下は、枯れ葉に埋まっている。
かなり大きい。おとなが、腕を広げてやっと抱きかかえられるくらいの大きさだ。
大きな木の切り株のすぐそばで、ひっそりと息づいているように見えた。
……すごく、きれいだ。
野添溂は、心の中でつぶやいた。
いろんな色に光って見える。はっきりした強い色ではない。暗い森の中で、ぼうーっと淡く、浮き立って見えた。
溂は、立ち止まって見惚れた。
……何の卵だろう。ダチョウかな?
だがここは、アフリカのサバンナではない。
……ヘビ?
ヘビにしては大きすぎる。
秋の日差しがこぼれ落ちる森の中で、落ち葉に半分埋もれたそれは、まるで巨大な宝石のようだった。
少なくとも、その、不穏な音に気がつくまでは。
こつこつ。
こつこつ。
秋の森の、清冽な空気にかすかに響く、密やかな音。
こつこつ。
こつ、こつ、かつ?
何かを問いかけるような、不安そうな音。まるで異界から漏れてくるように、くぐもって聞こえる。
こつ。こつこつ。
かつ、かつかつ。
柔らかい何かで、そっと、陶器を割ろうとでもするような?
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