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可愛かったあの頃……
……結局、かわいかったのは、最初の2週間だけだったな。
溂は振り返った。
幼い姿は、本当にかわいかった。
目がぱっちりしていて、頬も唇もふくふくとしていて。
幼い鳥や獣があきれるほどかわいいのは、親に見捨てられないため、という説がある。
もっとも、あのように卵を産みっぱなしにされたのでは、いくら雛がかわいくても無駄というものだが。
卵の色が七色に、輝いているように見えたから、七緒と名付けた。
フロレツァールは、言葉を理解しないといわれている。だが、ななお、というのが、自分の名前だということは、わかっているようだった。
なな、と呼ぶと、嬉しそうに飛んでくる。
いっそう、かわいくなった。
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