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あの面影を、僕は何処かで探していた───
始まったばかりだと思っていた高校生活も、いつのまにか二週目に突入していた。
一週目は決して上手くいったとは言えないものだったが、それなりの高校生活を送ることはできたと思う。
ただでさえ学年に一人や二人、この学校を去って行った者や留年してしまった者をこの目で見てきたのだ。
それに比べれば僕は、比較的幸運な方だ。
それでも、春の風が僕の頬をそっとかすめていくたび、生ぬるい気怠さと重苦しい憂鬱感に襲われる。
それに加え、暑いとも寒いとも言えない曖昧な気温の中に、自分自身まで淡く溶け込んでしまいそうな気持ちにもなる。
だから、春は嫌いだった。
そんなことをぼんやりと考えながら、桜並木の朝の通学路をゆっくりと自転車で漕いで行く。
そして僕は不意に見えた気がした。
ふわりと春風が舞い、辺り一面に広がった桃色の中に、「彼女」の姿を。
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