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 衝動的なものだった。    僕は昔から、なにをやっても駄目な人間だ。  勉強も運動もあまり得意ではない。  運動は特に酷く、いつもクラス最下位だ。    そのせいでよく、馬鹿にされる。  コミュニケーションも人より劣っていて、友達と呼べる人間もいない。    だから当たり前のように、いじめられていた。  体に傷が出来るような過激なものではなかったけれど、罵倒されたり物を隠されたりした。  肉体的な苦痛より、精神的な苦痛が大きかった。    高校二年生になってもいじめは続き、ついに僕は不登校になる。だが不登校になっても、心の傷は癒えない。    そして僕は昨日の夜、自殺を図った。  睡眠薬を大量に飲み、死ぬことにした。  しかし僕は今、生きている。  睡眠薬を使って、自殺するということが、無理があったのかもしれない。    僕が目を覚ましてから、医者と母親が来るのは、そう遅くはなかった。    母さんは僕を見るや否や抱きつきて、泣いた。  わかってあげられなくてごめんなさい、なにもできなくてごめんなさいと僕に謝ってくる。    その言葉が、僕はとてもつらかった。  その言葉を聞くたびに僕はまた、死にたくなった。    母さんはなにも悪くない。  幼い頃から父親のいない僕を、一人で育ててくれた。    こんな僕を……なにも出来ずに不登校になる親不孝な僕を、見捨てないでいてくれた。無理に行かせようともせず、優しくしてくれた。      ──だから僕は、死のうとした。      優しくしてくれるから、死にたいと思った。  その良心がつらいから、自殺しようと思った。  母さんが僕を嫌っていたら、死にたいなんて思わなかったかもしれない。  優しさは、ときに人を傷つける。  だから僕の傷は癒えず、むしろ悪化していった。    まともに人と関われない僕が、これから先どうなるかわからない。もしかしたら、働くことも出来ず、母さんに迷惑をかけ続けるかもしれない。    僕は迷惑をかけながら、生きたいとは思わなかった。  だから最後にかける迷惑として、自殺するつもりだった。
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