2人が本棚に入れています
本棚に追加
衝動的なものだった。
僕は昔から、なにをやっても駄目な人間だ。
勉強も運動もあまり得意ではない。
運動は特に酷く、いつもクラス最下位だ。
そのせいでよく、馬鹿にされる。
コミュニケーションも人より劣っていて、友達と呼べる人間もいない。
だから当たり前のように、いじめられていた。
体に傷が出来るような過激なものではなかったけれど、罵倒されたり物を隠されたりした。
肉体的な苦痛より、精神的な苦痛が大きかった。
高校二年生になってもいじめは続き、ついに僕は不登校になる。だが不登校になっても、心の傷は癒えない。
そして僕は昨日の夜、自殺を図った。
睡眠薬を大量に飲み、死ぬことにした。
しかし僕は今、生きている。
睡眠薬を使って、自殺するということが、無理があったのかもしれない。
僕が目を覚ましてから、医者と母親が来るのは、そう遅くはなかった。
母さんは僕を見るや否や抱きつきて、泣いた。
わかってあげられなくてごめんなさい、なにもできなくてごめんなさいと僕に謝ってくる。
その言葉が、僕はとてもつらかった。
その言葉を聞くたびに僕はまた、死にたくなった。
母さんはなにも悪くない。
幼い頃から父親のいない僕を、一人で育ててくれた。
こんな僕を……なにも出来ずに不登校になる親不孝な僕を、見捨てないでいてくれた。無理に行かせようともせず、優しくしてくれた。
──だから僕は、死のうとした。
優しくしてくれるから、死にたいと思った。
その良心がつらいから、自殺しようと思った。
母さんが僕を嫌っていたら、死にたいなんて思わなかったかもしれない。
優しさは、ときに人を傷つける。
だから僕の傷は癒えず、むしろ悪化していった。
まともに人と関われない僕が、これから先どうなるかわからない。もしかしたら、働くことも出来ず、母さんに迷惑をかけ続けるかもしれない。
僕は迷惑をかけながら、生きたいとは思わなかった。
だから最後にかける迷惑として、自殺するつもりだった。
最初のコメントを投稿しよう!