金持ちの彼との出会い

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 「いっけなーい!遅刻!」 食パンを咥えたのはいいが走りながら食べるのはなかなか至難の技だ、ある程度時間に余裕が出来たら美味しくいただこう。まぁ時間が経つと冷めてしまい美味しくなさそうだが。 「・・・あれ、学校ってどっち・・・?」 そんなくだらないことを考えていたら迷子になった、いや多分くだらない事を考えてなくてもこうなっていた可能性が高い。学校まで徒歩で行ける距離とはいえ曲がる回数も多いし中心街から離れているため入試の時も迷子になったのだから。因みに合格発表の時は母と共に車で行ったので行き方が違った。 「確かここの商店街を右に曲がって住宅街の中をつっきれば・・・」 約3ヶ月前のことをうろ覚えの状態で歩を進める。こんなことになるぐらいだったら春休みの間に学校までの道のりを覚えておけばよかった。 「きゃっ!」 曲がり角を曲がった瞬間誰かにぶつかった、相手も急いでいたのか激しくぶつかり合い尻餅をつく。 「いたた・・・、あっごめんなさい!余所見していたもの・・で・・・」 お尻に鈍い痛みを感じながらも顔を上げると、サラサラのストレートヘアで切れ長の瞳に驚くほどのまつげの量と長さ、薄い唇に白く艶々の肌。幼い頃から色んな年代にモテてきた感じの顔だ。 「・・・イケメンだ」 思ったことが思わず口からこぼれる。ここまでイケメンだとぶつかったことすらラッキーだったと考えてしまうほど。 「は?」 爽やかで非の打ち所がないようなイケメンから発された第一声が「は?」とはなんですか、イケメンが台無しじゃないの。 「じゃなくて、ごめんなさい!怪我とか・・・」 相手の顔より下を確認すると、同じ学校の制服を着た男子高校生だった。私の制服と柄が同じズボンとネクタイを締めている。 だが真っ先に目に入ったのは制服ではなかった。まさかの光景が目に飛び込んできて顔の色が真っ青になっていく、血の気が引くのが自分でもわかるほど。 「怪我はないが・・・」 2人の視線の先は、苺ジャムがべっとりとこべりついた新品のワイシャツとブレザー。 「・・・あの・・・えっ・・・テヘペロ?」 人間パニックになると本当に訳のわからない事を喋るらしい。今の私がいい例だろう。
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