金持ちの彼との出会い

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 4月8日 午前7時38分 「きゃあああああ!」 とある一軒家から響く女の子の奇声。 「嘘でしょ?!なんでこんな大事な日に限って寝坊するの?信じられない!」 ついこの間仕立てたばかりのおニューの制服。黒が強めの紺色のブレザーに、赤と黒が基調のチェックのスカート、それとほぼ同じ柄の大きなリボン。私はこの制服を着たいがためにこの高校を選んだと言っても過言ではない。 「昨日のうちに荷物準備しといてよかったー」 昨日の自分グッジョブ、誰も褒めてくれないので自分で褒めるしかないのだ。 着替えたらすぐに階段を下り洗面所へ。顔を洗い歯を磨く、せっかくだから髪の毛をオシャレに結びたかったがそんな余裕はどこにもない。仕方なく櫛とドライヤーで無理矢理寝癖を直して身支度を終える。これで雨が降ったら湿気により一瞬で髪の毛が起きた瞬間と同じになるに違いない。 「じゃあ行ってくるね!」 再び2階へ行きスクールバックを肩にかけて、鏡の前に立ちスカートのシワを伸ばし変なところがないかをチェック。「よし」と小さく深呼吸をしてまた一階へ。 「ちょっと、朝ごはんぐらい食べて行きなさい!」 今日一回も足を踏み入れてないリビングから母の声が聞こえてきた。娘の晴れ姿を拝める日に限って仕事が入ってしまった母親を置いていき、私は1人で寂しく学校へ向かうのだ。 「ふぁーい」 私の制服姿を見て、顔をほころばした後に少し悲しそうな表情を見せてくる母を横目で見ながら、カウンターに置いてあった朝食から香ばしくトーストされた食パンだけを咥えていざ学校へ。 「いってきまーす!」 こうして私の高校生活は幕をあける。
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