第14話

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(菖蒲を殺せ、と言われても第一菖蒲がどこにいるのかなんて分からないし……) 城の中で任務の準備をしながら才蔵は考えていた。 「才蔵様、お出かけですか?」 その時ちょうど宵が通りかかった。 「あー……まぁちょっとね。」 そこで宵が以前菖蒲に会ったことを思い出した。 「……前城下に行った時、女に会ったって言ってたっけ?」 「あ、才蔵様について教えてくれた人ですか?」 「そうそう。その女についてなにか覚えてることはない?」 「…………うーん……随分親しげに話しかけられたこと以外は……」 「親しげに話しかけられた?」 「はい。」 「俺達が密会していること以外になにか言われた?」 「………「任務が失敗したから死んだと思った」とか…そんなことを言っていた気がします…」 「任務?失敗?心当たりは?」 「ありません。でも彼女はもしかしたら記憶をなくす前の私を知っているのかな、と思いました。」 「…………記憶……あんたはここに来る前の事、なにか覚えてない?」 「…そう………ですね……なにか思い出しそうになった時はあるんですけどそれをどこかで嫌がっているような…思い出すのが怖いような……そんな気がして……」 「今までの記憶に思い出したくないものがあるのかもね……」 「その可能性は大きいと思います。………思い出そうと頑張ってみる時もあるんですが…どうも靄がかかったみたいに思い出せなくて…深い霧の中…と言いますか…」 「本能的に思い出すことを拒んでいるって事?」 「そうかもしれません………だから今もここに来た時から何も思い出せてないんです」 宵は申し訳なさそうに俯く。 「別に今すぐ思い出さなきゃいけないほどじゃない。ゆっくり自分の速度で思い出せばいい。」 優しい声で才蔵が言った。 「ありがとうございます。」 (親しげに……ね…)
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