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プロローグ
***
逃げ切ったと思ったその先は行き止まりだった。
この辺りの土地には詳しいと自負していた男。だが実際、壁により道を阻まれていた。
舌打ちをした男は壁を背に、やってくるだろう者たちを迎えることにした。
「来るなら来い!」
走り続けて上下する肩を壁に押しつける。冷たい感覚が背中に、頭に伝わってきた。
冬の寒さに冷たくなった壁が体温を奪っていく。身が縮むような冷たさに、男は目を見開いた。
「冷たい……冷たすぎる!」
男はそこから跳び退いた。やはりそれは氷の壁だった。
「お前か!」
男が言うと壁が弾ける。
月明かりに照らされ、キラキラと輝く。全てが地に落ちて消えると一人の少年が現れた。
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