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「おれのことがムカつくって?」
「ち、違います! 堀田先生のことじゃありません!」
「じゃあ、誰だ?」
「え?」
授業は中断。魁斗に集中する視線の数々。
面白いものが見られそうだと期待する目に、魁斗は裏切り者と言いたい気分になった。
ちらりと諒を見れば完全に寝ている。
だからと言って、
『諒にムカついてました』
などと言って、万が一にも諒の耳に入ったら殺されるかもしれない。
そう、魁斗は思っていた。
「……すみません」
素直に謝ると同時にチャイムが鳴る。
「よーし! 森崎、放課後残れよ」
「え?」
「文句あんのか?」
「……ありま、せん……」
こうして授業が終わる。最悪の気分を浄化させようと親友、和泉諒を睨みつける。
――――僕は悪くない。
元はと言えば贔屓されている諒と、それを許す教師たちのせいだと、罪の矛先を変えて安心する。
――――断じて僕のせいじゃない。
魁斗の高校生活は、とても憂鬱なことばかりであった。
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