38人が本棚に入れています
本棚に追加
/218ページ
「普通は学校終わったら、外に出るだろ。しかも金曜日。門限は夕飯の時間だって言う午後六時。遊ぶ時間は充分にあるだろ」
「そうっすね。勉強でいっぱいなんじゃないんすか? それに、手続きが面倒だって聞きましたよ」
手入れが行き届いている校内の緑。
あまりにも静かな敷地に、人が生活する様子が全く見えてこない。
ここまで設備の整った高校であるにも関わらず、入学金や偏差値は普通の高校とあまり変わらない。多少、高いくらいだ。
「囚人みたいだと思わないか?」
そう言った男の目の前に、当たり前のように正門を出る男子生徒がいた。
「あれ」
「気のせいじゃないんすか?」
「……いや、それでもだ」
「負けず嫌い」
男は後輩の頭を思い切り殴った。
「痛った!」
「とにかく今日の目的。さっさと済ませるぞ」
「……はい」
渋々頷く彼。
それを見てから男は目線を門に向ける。ちょうど遠目に一人の男子生徒が見えてきた。
「逃げはしなかったみたいだな」
魁斗の姿を確認し、男は軽く手をあげた。
最初のコメントを投稿しよう!