第1章 2 疑いの眼差し

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「普通は学校終わったら、外に出るだろ。しかも金曜日。門限は夕飯の時間だって言う午後六時。遊ぶ時間は充分にあるだろ」 「そうっすね。勉強でいっぱいなんじゃないんすか? それに、手続きが面倒だって聞きましたよ」  手入れが行き届いている校内の緑。  あまりにも静かな敷地に、人が生活する様子が全く見えてこない。  ここまで設備の整った高校であるにも関わらず、入学金や偏差値は普通の高校とあまり変わらない。多少、高いくらいだ。 「囚人みたいだと思わないか?」  そう言った男の目の前に、当たり前のように正門を出る男子生徒がいた。 「あれ」 「気のせいじゃないんすか?」 「……いや、それでもだ」 「負けず嫌い」  男は後輩の頭を思い切り殴った。 「痛った!」 「とにかく今日の目的。さっさと済ませるぞ」 「……はい」  渋々頷く彼。  それを見てから男は目線を門に向ける。ちょうど遠目に一人の男子生徒が見えてきた。 「逃げはしなかったみたいだな」  魁斗の姿を確認し、男は軽く手をあげた。
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