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「不思議ね」
「え?」
レイラがカイトを見つめた。
「今、わたしはカイトを食べたいとは思わない。愛おしい。わたしはあなたをなくしたくない」
「僕も同じです」
人間であること。龍であること。
種族の壁をいつの間にか越えて、二人は手を取り合う。
レイラの目元に光る涙を見たカイトは感情のままに口を開いた。
「許せない」
「カイト?」
「神様はすごい人だと思っていた。神様は尊敬すべき人だと」
「そうね。誰もがきっとそう思っていたはず」
レイラは目を伏せた。
「僕は神を絶対に許さない!!」
そんなカイトを見てレイラは驚く。
「殺したいの?」
「僕は、親友に殺すことはいけないと言った。そんなことしたら、もっと大きな争いが起こる気がしたから」
世界が終わる瞬間に生まれた新たな感情は、裏切り。神に対しての不信感。
深く心を支配する闇。蠢くそれが、素直で優しいカイトを変えてしまっていた。
「僕は今、神様を消し去りたい! この世界のように消し去りたい! 消える生命の悲しみを思い知らせてやりたい!!」
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