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知らない相手が名前を呼び、睨みつけ、罵り、殴りかかり、時にはナイフを出してくる。たまたまそこにいた奴にちょっかいを出すレベルではない。
諒の喧嘩相手と思ったこともあったが、本人は知らないと言う。
魁斗とわかっていてやってくる。
つまり、繁華街での暴行事件を知っている可能性が高いと魁斗は思っていた。もしかしたら事件を起こした本人かもしれない。
「なぜ、僕を知っているんですか?」
「前から知ってる」
「僕は知りません」
「オレのこと、死んだら思い出すかもしれない」
男は刃渡り二十センチメートルほどのナイフを持ち出した。
――――死んだらとか意味わかんない! ふざけるな!!
繁華街での暴行事件を聞きたいところだが、聞ける状況にない。
このことは刑事にも言っておらず、身を守るためにも言った方がいいかもしれないと魁斗は心から思う。
刑事が信用出来なかったのもあるし、嫌な記憶が蘇るかもしれないと思うと話せなかった。
――――生きていたら言う。うん、そうしよう。
魁斗はまだ半分しか閉められていない門を振り返る。
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