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見たことのない細い通り。しかし悩んでいる暇はない。魁斗はその通りを駆け抜けることにした。
――――駅がありますように!
願いを込めて一歩を踏み出した時、強い力に逆方向に引っ張られてバランスを崩す。
気づいた時には、壁にぶつかり座り込んでいた。
「痛……っ」
何が起こったのか理解するには、そう時間はかからなかった。
正面に立ちはだかる三人の男。大学生か、社会人か見た目にはわからない。
スーツ姿の男もいれば、シャツにジーパンといったラフな格好の男もいる。
身長、体格と、全員魁斗より上。
その後ろに息を切らせて走ってきた男が合流し、四人になる。
最初に校門で声をかけた男。つまり、彼は囮だったわけだ。気づくのが遅すぎて待ち伏せに捕まった。魁斗は心の中で舌打ちする。
複雑に走ったつもりだったが、魁斗には学校周辺の土地勘がない。どのみち太刀打ち出来なかった。
「何度も同じ手が通用すると思うか?」
「何度も?」
何度もとはどういうことだと問おうとして、制服の襟ごと持ち上げられた。
そのまま壁に立たされた状態になる。ギリギリで足が付く程度。逃げようにも力が入らない。
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