第1章 1 やる気が行方不明

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第1章 1 やる気が行方不明

 ***  淡々と授業は進められていく。  先生が黒板に数式を書く音。教科書を(めく)る音。ノートにシャープペンを走らせる音。時折、外にいる生徒の声が紛れ込む。体育の授業だ。  ふと外を見遣ると満開だった桜はなかった。葉桜となった今でも、悠然と立つそれは美しい。  長閑な午後。  眠気を誘う暖かさと戦っている窓際の戦士。森崎(もりさき)魁斗(かいと)は、この間入学したばかりの高校一年、十六歳。  名前はそこそこ恰好いいのだが、見た目は地味系男子だ。  授業中に眠気と戦うあたり集中力はなく、やる気もない。そんな彼に気づかない数学教師ではなかった。 「森崎」  数学教師、堀田(ほった)はすでにうたた寝を始めている魁斗を呼ぶ。  反応するはずがない。 「森崎魁斗!!」  彼の耳には届かない。どんな大声にも驚かないほどに、深い眠りに落ちようとしていた。  隣にいた女子生徒がシャープペンで魁斗の二の腕をつつく。しかし起きる気配はない。 「よーし、いい度胸だ」  堀田は眉をピクピク動かして、持っている教科書を真っ直ぐに構えた。
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