プロローグ

1/6
前へ
/218ページ
次へ

プロローグ

 ***  逃げ切ったと思ったその先は行き止まりだった。  この辺りの土地には詳しいと自負していた男。だが実際、壁により道を阻まれていた。  舌打ちをした男は壁を背に、やってくるだろう者たちを迎えることにした。 「来るなら来い!」  走り続けて上下する肩を壁に押しつける。冷たい感覚が背中に、頭に伝わってきた。  冬の寒さに冷たくなった壁が体温を奪っていく。身が縮むような冷たさに、男は目を見開いた。 「冷たい……冷たすぎる!」  男はそこから跳び退いた。やはりそれは氷の壁だった。 「お前か!」  男が言うと壁が弾ける。  月明かりに照らされ、キラキラと輝く。全てが地に落ちて消えると一人の少年が現れた。
/218ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加