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「なあに? ため息なんてついちゃって。一日はこれからじゃない!」
静かな中庭に響き渡る声。
驚いた魁斗が振り向けば、見知った顔がそこにあった。
くすっと笑うかわいらしい顔。大きな瞳。赤い頬。特徴的な茶髪のツインテール。
見た目にも元気な女の子だ。
「風紀委員の先輩?」
「真中樹里、二年よ。よろしくね、森崎魁斗くん」
この間、刑事が呼んでいると教えてくれた先輩。真中樹里と名乗った彼女は、明るく活発だとよくわかる笑顔を魁斗に向けた。
「こんな所で何してるの?」
「別に」
自分の記憶や刑事とのやり取りを話すわけにはいかず、素っ気ない態度になる魁斗。
特に気にするわけでもなく、樹里は笑顔を向ける。
「イジメにでもあったの?」
「まさか」
「そういうタイプだと思ったのにな」
「そんな風に見えますか?」
「イメージ。何となく!」
魁斗が怒っていると、樹里はその手を引っ張る。落ち込んだ様子の魁斗などお構い無しに、別棟の方へ歩いていく。
「真中先輩!?」
「樹里って名前呼んでよ。苗字、嫌いなの」
「じゃ、じゃあ樹里先輩! どこへ行くんですか?」
ぐいぐい引っぱりながら、進んでいく樹里。魁斗が転びそうになるのも構わず歩く。
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