38人が本棚に入れています
本棚に追加
/218ページ
「簡単には死にませんよ」
魁斗は男に背を向けて、門の外へ走り 出す。
外出許可もないが、命を守るためには外に逃げるしかなかった。
魁斗は走ることだけは得意。それは諒でも追いつかないほどの速さだ。重い教科書を持っていていつもより遅いが、それでも男から逃げるには充分な速さ。
すでに男の姿は見えなくなっていたが、魁斗は走り続けた。
恰好が悪くても争いから逃げられる足があるのだからと、武器と称して戦う気分になる魁斗だった。
――――諒とは大違いだな。
こんな時に思い出す。
入学式直後、魁斗は同じように絡まれたことがある。その時、一緒にいた諒は逃げなかった。魁斗を守ろうとして、自分より大きな体の男たちに殴りかかった。
運がいいのか悪いのか、先生たちに見つかって難を逃れた。性格が悪い、問題児だと言われている原因でもある。
――――喧嘩好きが一番の原因かもな。
学校からはだいぶ離れた。
しかしどれだけ走っても人に出会えない。助けを求めることは無理だ。
このまま一度駅に行った方が良さそうだと回り道をする。
しかし、複雑に走り過ぎたせいで道がよくわからなくなってきた。こんな時に駅の方向がわからない。
最初のコメントを投稿しよう!