第1章 4 狙われる

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「簡単には死にませんよ」  魁斗は男に背を向けて、門の外へ走り 出す。  外出許可もないが、命を守るためには外に逃げるしかなかった。  魁斗は走ることだけは得意。それは諒でも追いつかないほどの速さだ。重い教科書を持っていていつもより遅いが、それでも男から逃げるには充分な速さ。  すでに男の姿は見えなくなっていたが、魁斗は走り続けた。  恰好が悪くても争いから逃げられる足があるのだからと、武器と称して戦う気分になる魁斗だった。  ――――諒とは大違いだな。  こんな時に思い出す。  入学式直後、魁斗は同じように絡まれたことがある。その時、一緒にいた諒は逃げなかった。魁斗を守ろうとして、自分より大きな体の男たちに殴りかかった。  運がいいのか悪いのか、先生たちに見つかって難を逃れた。性格が悪い、問題児だと言われている原因でもある。  ――――喧嘩好きが一番の原因かもな。  学校からはだいぶ離れた。  しかしどれだけ走っても人に出会えない。助けを求めることは無理だ。  このまま一度駅に行った方が良さそうだと回り道をする。  しかし、複雑に走り過ぎたせいで道がよくわからなくなってきた。こんな時に駅の方向がわからない。
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