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 言うなり結城さんは、話題を変えてくれた。彼は小憎らしいほど自然に話し出す。 「恵利菜さんの学校は、けっこうお嬢さん学校でしたよね」  私は思わず苦笑した。  腰を抜かすほど高額の学費で知られる国際スクール出身の結城さんに『お嬢さん学校』と呼ばれるほど母校は格式ばってはいなかったからだ。授業料も高くなく、富裕層の子女が多いというわけでもなかった。まあ、確かにミッション系の女子高ではあったけれど。 「結城さんの学校ほどじゃないですけどね」 「カトリック系でしたっけ」 「ええ。私の母校は市内にある聖マリアンヌ学園で、校証のバッジだけじゃなく、鞄や制服の釦にまで銀の天使が彫り込まれていました」 「ロマンチックですね。恵里菜さんも、もちろんカトリックなんですか?」  ところが、そうではない。  私は淀みのない笑顔で告げた。 「・・・・・・私は仏教徒なんです。受験に受かったからというだけで通ってたんですけど。学校では内緒にしてました」  結城さんは僅かに相好を崩した。 「仏様ですか。それも、あなたに似合ってますね」     
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