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ぐうううううう。きゅるるるう。ずここここ。
腹の虫も催促を繰り返している。その音色も、今までに聞いたことがないメロディだ。俺自身、よほどの飢餓状態に瀕しているのだろう。
今日は定時に帰るため、昼休み返上で飯も食わずに仕事に没頭していたんだ。おかげで朝から飲まず食わずだった。
カバンには同僚からもらった弁当があることには、ある。しかも駅弁だ。スーパーで駅弁フェアがやっていたとかで、この瞬間にうってつけだろう。ただ、ちょっとした「問題」があるため、開封できないでいた。
仕方ない、車窓の風景でも眺めて気を紛らわせることにするか。住宅ばかりであまり見ごたえは無いが。
しばらくして、車内に「まもなく、みさき公園駅、みさき公園駅」というアナウンスが流れた。
みさき公園といえば、子供の頃に親によく連れてってもらったなあ。イルカショーなんかがやっていて、可愛かった覚えがある。イルカか。あれ食べられるのかな。背びれの部分とか、焼いて食ったら美味そう……。
って、何考えているんだ俺は。空腹過ぎて、どうやっても食事にしか思考が向いていかない!
背に腹は代えられない。カバンの中の駅弁を取り出そうと思ったそのとき。一人の少年が目に入った。
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