お婆様へ

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お婆様へ

前略、お亡くなりになられたお婆様へ。私は小さな箱庭の中で今までにあまりなかった非常に貴重な体験をしております。 それは何かと申しますと嫉妬です。私は今、数々の人から嫉妬を受けております。生前、お婆様にだけはお伝えしたのでもう知っておられることかとは思いますが私は中学時代いじめられていました。それは私の愚鈍が引き起こした末の事故。 そんな私が今なんということでしょう!何度も繰り返しますがそんな私が!今、妬みや嫉妬。そう!優秀なものに向けられる特有の感情を人に向けられているのです! お婆様は生前こう仰っていましたね。「こうしていじめられても仕返しや復讐を考えないお前はいい子だ。七つの大罪を知っているかい?おや?知らない。なら、いいんだ、今からおばあちゃんの言うことをよく聞きなさい。いいかい?七つの大罪のうちに嫉妬というものがあるんだがお前だけはこれをしてはいけないよ。これはおばあちゃんとの最期の約束だ」 正直に言ってこの言葉、意味が分かりませんでした。今でも、若干このお婆様の台詞は『七つの大罪』という言葉を使いたかっただけではないかと疑っております。あぁ、お婆様。意見、反論等はあと80年先になればたっぷりと聞かせていただきますのでそれまでは心の内に秘めていただくと助かります。 すみません。少し本題から脱線していました。こんなだから私はいじめられていたのですよね。長く話しすぎるとどんどん脱線していきそうなので、もうそろそろ私が伝えたかったことを述べさせていただきます。 果たしてお婆様。嫉妬とはそんなに悪いものなのでしょうか?お婆様は生前、お亡くなりになる直前は特にしつこく嫉妬は忌むべきものだとおっしゃっていましたよね。私には悪い物には感じられません。 だって現に私は数多の嫉妬を受け、この身が焦がれそうなくらいの歓喜に襲われております。嫉妬を受けるということは自分が優秀だと他人に認められているという証ではないでしょうか? お返事は80年後。お待ちしております。貴女の愛しの孫より。
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