第1章

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「余計なこと言わずに案内しろよ?」 「勇者様のお命じなら」  俺の前を歩く洗脳野郎についていく。今の気持ち? 非常に不愉快だ。こんなやつについていくとか不愉快。さっきの階段も上がりきることができ、今度こそこいつとおさらばした。  赤い絨毯を踏みしめていけば豪華かつでかい扉が見えてくる。後10分もすれば俺は勇者になるだろう。自分が勇者になるビジョンが浮かばないのは、今まで勇者に憧れを抱かなかったからだろうか。  俺の目当ては勇者の剣、ただ1つ。正直勇者っていう肩書きはいらない。勇者は金を貰えないんだ、魔王を倒さなかったら。貰えないわけじゃないけど、村人でも稼げるような分しか貰えない。無いに等しいわけだ。  そういや王様側からパーティーメンバーを紹介されるのだろうか。魔王を倒すことに熱心になるようなメンバーを。俺にとっては不都合極まりない。  猫被って「私は1人で魔王を倒すべく、勇者になったのです」とか言うか? もしくは道中洗脳してくか? 「おいお前、まだ入らぬのか」 「あー、はい。入りますよ、入ります」  考え事をしていたら近くの兵士に聞かれてしまった。確かに扉のまえでブツブツ呟きながら考え事されたら困るし心配になるよな。こいつは正常だ。  さっきの兵士に謝っといて、でかすぎる扉を見上げる。……これ押して開くようなサイズか? グッと両手で押しても、開かなかった。  さっきの兵士が開くための鈴を教えてくれたのでチリンチリンと鈴を鳴らすと、ギイィと音をたてて扉が開いた。  さて、王様はどんな人だろうか?
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