キジトラ 初秋

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「此処に居たのね」 それがどうした、ずっと此処に居る。この私の寝床だ。 「三日も来ないから、探したのよ」 頼んでない。 目の前に置かれた食べ物から良い匂いがしてくる。 腹は満たされてるはずなのに…… 此処まで持って来たことに免じて食ってやるか。 勘違いするな。人間は嫌いだ。 「心配したんだよ。怪我して、動けないんじゃないかって」 この私が、そんなに間抜けに見えるか? 変わった娘だ。笑顔なのに目に涙を溜めている。 底抜けに明るい娘は、実は泣き虫だ。 「公園で食べ物をあげると嫌がる人も居るから、また店に来てね」 調子に乗って頭を撫でているが、気にせず食べ続けた。 「本当に怖かったんだよ。あんまり心配させないで。 君は私の恩人なんだから」 人間は嫌いだ。それは変わらない。 だが、この娘は嫌いじゃない。
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